日本人の平均寿命は世界一
医学の進歩によって日本人の平均寿命は今や世界一。日本に住んで日本食を食べ、日本の医療を受けることが長寿世界一の秘訣なのです。しかし少子化とともに、高齢者は増加。介護や医療の必要な方も増えています。残念ながら老化現象を治す特効薬はありません。治るなら不老不死ですから。高齢化の進展とともに、治る限界に達した、重度の障害を持ちながら暮らす方も大勢おられます。
様々なアンケート結果に共通する傾向ですが、高齢者の6割以上は自宅で最期までくらしたいという願いを持っています。
しかし実際にはという問いかけには皆さん悲観的で、半数以上の方が「困難だ」と思っています。その理由の1位と2位は「介護が大変」「家族に迷惑がかかる」という介護の問題、3位と4位は「往診する医者がいない」「急変時の対応に苦慮する」という医療の問題です。
制度の浸透不十分
厚生労働省による調査では、在宅医療の体験者である医師と療養者は最期まで家で暮らすことが可能だと思っているのに、一般の方あるいは在宅医療を受けずに外来通院・入院だけの方は最期までは困難だと思っているのです。「家に帰せない」「帰られない」と思い違いをしているのではないでしょうか。
少数ではありますが全国で20数人、東北では2人の方が「全身マヒで人工呼吸器を装着し胃ろうの栄養を受けながら独居で暮らしでいる」のです。介護保険や障害福祉サービス、その他の制度を駆使すれば、最重度の方も暮らしていくことが可能な方法が既にあるのです。在宅医療を受けながら独居で最期を迎えたがん療養者の方々も多数おられます。
家で最期まで暮らすことが困難だと思うのは、介護・福祉制度と医療体制についての知識や使い方が、医療従事者や一般の方に浸透していないためではないでしょうか。
在宅医療って何?
対象となるのは「病気が理由で通院困難」な方に限ります。主に車いすや寝たきりの生活の人となりますが、「がん末期の方」「認知症の高度な方」は歩けても在宅医療が適応します。
昔は医者が家に行って医療をすることを往診と言っていました。今は在宅医療と言います。
この3つに対応する診療所として
「在宅療養支援診療所」があります。
もしあなたや、あなたの家族や親戚、友人らが病気のために通院することが 大変であれば、在宅医療を受けることが十分に可能なのです。
在宅医療ができること
在宅医療では、血液検査・尿検査はもちろん、心電図、超音波エコー、胸・腹などのエックス線写真、内視鏡、気管支鏡の検査など家でできます。人工呼吸器・酸素吸入・胃ろう経管栄養・中心静脈栄養・点滴・輸血・がんの緩和医療もできるのです。肺炎も家で治すことが十分可能です。しかし診療所によっては在宅でできる医療に制限がありますので、今の主治医に相談する、あるいは診療所に直接連絡して聞いてみるのも良いでしょう。
入院している方は「退院後の医療と介護」について入院中に話し合いを行います。医療と介護の体制を整えたうえで安心して退院できるのです。
在宅生活を支える諸制度
- 65歳以上の方と40~64歳の方で、特定の病気(脳卒中・がん・一部の難病等)により介護が必要となった方が利用できます。
- 在宅医療が適応される方は①の介護保険制度によるサービスに加えて、②の障害福祉サービスを利用できる場合があります。障害福祉サービスを利用するためには障害者手帳の交付や障害程度区分の認定などが必要です。また、難病の方も障害福祉サービスの対象となります。
- ①の介護保険制度、②の障害福祉サービスの他、各自治体の独自制度があります。仙台市の場合、全身性障害者等指名制介護助成などがあります。
- 各医療保険の他、国や各自治体が定める疾病や状態に該当する場合は、公費による医療費助成が受けられる場合があります。
- 車いす・寝たきり・気管切開・胃ろう栄養などは生命保険上の高度障害に該当します。生きていて、死亡時と同じ金額がもらえる場合があります。これで生活を立て直しましょう。解約ではありません。約款をご覧下さい。住宅ローンの減免もあります。
支え合いながら
誰しもが生活しながら人生を全うする時が来ます。次第に歩けなくなり、食べられなくなり、呼吸が低下し、血圧が下がります。多くの方は老衰であれ、がんであれ、難病であれ、残り少ない体力を無駄に使わずに終始眠るようになります。それを見てご家族は不安に駆られるかもしれません。家族のつらさや不安を投射してあたかも本人がつらいかのように見えるのです。
でもそれは勘違いです。冷静になりましょう。すやすや眠って実は一番楽な本人がそこにいるのです。最期の日には家族水いらずの時間を過ごしましょう。24時間往診があります。介護体制も機能しています。息を引き取った時が大往生。これこそ人生の集大成です。
在宅医療はじめの一歩
在宅医療や介護のことについて相談してみたい場合は、以下にまず聞いてみましょう。
家族ができるだけ疲労することなく、患者さんと一緒に生活ができることを目指しています。
○ がんばらない在宅医療・介護が重要です。
○ 家族の方が仕事をしていても大丈夫です。
自分がどんなふうに最期まで過ごしたいか、今のうちから考えておきましょう。